厚生労働省は、厚生年金の支給開始年齢の引き上げに向けた案を社会保障審議会年金部会に示した。
政府は2004年の現行制度への改革の際、「百年安心の制度」と胸を張ったはずだ。
あれから7年しかたっていない。政権が変わったとはいえ、引き上げはあまりにも唐突だ。
仕組みがころころ変わっていては、老後の生活設計もままならない。高齢者の雇用が不十分な中、実施すれば生活苦に陥る人も出てくる。
現行の引き上げ計画が終わらないうちに見直そうというのはなぜか。
少子高齢化が急速に進み、年金財政が予想以上に悪化したためとしているが、なぜその時点で見通せなかったのか。
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年金財政にどういう影響を与え、再び引き上げることはないのか。
まずは、国民にわかりやすい正確な情報を公開すべきだ。
現在、厚生年金のうち基礎年金は原則65歳から、報酬比例部分は60歳からそれぞれ支給されている。
このうち、報酬比例部分について男性は25年度まで、女性は30年度までに65歳とし、基礎年金と時期を合わせることが既に決まっている。
厚労省は、▽65歳への引き上げ時期をさらに前倒す▽将来的に開始年齢を68歳に引き上げる−など三つの案を提示した。
11日の部会では「決まったものを途中で変えるのは、国民の信頼低下を招く」「生活設計に影響を与える」など慎重意見が目立った。
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当然だ。厚労省は、こうした声を重く受け止めなければならない。
大きな問題は、引き上げた場合、無収入の人が増えることだ。
政府は、希望者全員の65歳までの継続雇用を徹底させるため、高年齢者雇用安定法の改正を検討している。しかし、経済界が反発し、実現のめどは立っていない。
仮に定年が延長されても、若者の就職に影響が出る心配が出てくる。
世代間格差も見逃せない。
厚労省の引き上げ案では、61〜64歳の「団塊の世代」の給付には影響は出ないが、51歳以下の開始時期は、現行の64歳から68歳まで上がる。
保険料を支払う期間が延びる上、開始時期が遅くなるようでは若い世代の不満が高まろう。
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年金不信がさらに広がり、保険料を納めない人も増える可能性がある。制度そのものが破綻しかねない。
厚労省は部会の議論を受け、来年の通常国会にも法案を提出したいとしている。
しかし、これだけ問題が噴出している以上、拙速は禁物だ。年金制度全般について、あらためて抜本的に見直すべきではないか。
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