孫氏と堀氏との対話
2011/08/06 11:52
8月5日 20:00から23:30にかけて、3時間半行われた、ソフトバンクの孫社長とグロービスグループの堀代表の公開討論を見ていたので、更新が滞ったが、一応まとめて見たい。
内容は、従来脱原発派と推進派のそれぞれの主張が繰り返されているだけで、むろんこの場で結論が出るわけではないが、印象として堀氏の追求が甘い。孫社長が先輩だと言うことで腰が退けているのかもしれないが。孫氏は相手の言葉を遮り、割って入り、そして趣旨を別の方向へずらし、また科学的根拠の無いことは素人だからしゃべってはいけないのか、式に単なる感情論にすり替えている。
たとえば、孫氏の言葉として、ある学者は放射線は大丈夫だと言い、ある学者は危険だという。親としては、� �険だという安全策を採るのが当たり前だろう、と従来通り主張するが、むろん、平時で誰も犠牲にならないのであればそれでよい。しかし、今回は、従来の医学的検証から大丈夫だと明らかになっているレベルの放射線のために強制退避を命令して、多くの人々の生活を犠牲にした。それが問題なのだ。
また将来もし癌になったら誰が責任を取るのかと、これも従来通りのことを孫氏は言うが、過去の外部被曝、内部被曝に関する追跡調査で、決して問題にはならない、もしくはそれが証明されたことはないとの堀氏の反論に対し、でも癌になったら責任を取れるかと迫る。
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これは、極めて理不尽な脅迫ではないのか。現実に多くの高齢者が亡くなり、多くの人が生活基盤を破壊され、財産を失っているが、その責任は誰が取るのか。政府の無策のために国民全体が責任を押しつけられているではないか。将来癌になったら、今大丈夫だと言っている人間だけが責任を取らされるのか。また、将来も間違いなく癌になる人間はいるが、それが福島原発のためとの検証を誰がどんな責任で行うのか。
人間は一定の率で必ず癌にもなるし、必ず死ぬ。その内のどれが福島由来の癌であり死亡であると証明できるのか。
そうなるかもしれない恐れよりも、現実に起きている死亡、被害を問題に� ��べきではないのか。しなくとも良い強制退避で、大勢の高齢者や病院が死に、大勢の家族が離散し、多くの人が生活基盤を破壊され、子供達は親から引き離されて疎開させられ、運動不足になりストレスに曝されている。この、現実に存在する被害は誰が責任を取っているのか。結局、東電以外誰もとらず負担は国民に押しつけられ、犠牲になった人たちは運が悪かったですむのか。一番責任を取るべきは、ありもしない恐怖をあおり立てるオカルト達であり、無能無策の政府ではないのか。
このような問題を無視して、なにが将来の恐れ、責任なのか。
今のレベルの放射線による癌の危険性がもしあるとすれば、喫煙、飲酒、ストレス、肥満、食生活、環境汚染、NOXなど無数の癌要因と、どのように判別するのかの手段、規準 を示してからの話だ。
それなしに将来それで癌になる恐れがないように祈るとは、将来誰かがどこかで自分のわら人形に五寸釘を打ち込んでいてそれでのろい殺される恐れがないように祈るのと同じレベルだ。
孫氏は相手の言葉を遮る
相手の説明を自分の方へねじ曲げことが目に余る。一例として、堀氏は自然に存在するラドンで、イランなどでは600mmSVの内部被曝をしている(年間か生涯か聞き漏らしたがいずれ、今回暫定で出された外部内部被曝合計生涯100mmSVよりは極めて大きい)という堀氏の説明に対し、それを邪魔し説明させない。電磁波の危険性を堀氏がその前に指摘したのに対し、それを持ち出して自然放射線による被曝を、故意に電磁波の危険性にねじ曲げ、電磁波による危険性はないと専門家は言っている� �主張する。それではダブルスタンダードではないか。
今回のレベルの放射線は危険ではないと言う専門家の言葉には将来癌になったら責任を取るかとせまり、電磁波の危険性ついては専門家は大丈夫だと言っていると逃げる。将来電磁波で癌になったら誰が責任を取るのか、どうやって責任を取るのか、同じことではないのか。
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堀氏は、素人同士が言い合ってもこの問題は埒があかないから、専門家同士が公開討論をすれば良いではないか、と提案したら、孫氏は、専門家は勝手にやればいい、素人は発言してはならないのか、と言い出す。
互いに素人だがとことんやろうとの合意での今回の公開討論ではないのか。
孫氏は御用学者との言葉を使ったが、少しでも低レベルの放射線は危険ではないと主張する専門家はすぐに御用学者のレッテルを貼られ、膨大な批判が来るようでは公平な議論など出来ないだろう。だから、双方の理論を持つ専門家の公開討論をしてはどうかと堀氏は言っているが、孫氏は勝手にやればよいという。専門家の根拠が必要な論争を孫氏は故意に避けてい るのではないか。
また、東電の今までの利益を一回の事故で全て無くしてしまうような原発のコストが本当に安いのか、と孫氏は言うが、全ての原発が事故を起こすわけではない。原発全体を考えるとき、原発が従来起こした事故は三回に過ぎず、全世界の原発の生み出した利益は遙かにそれを越える。
孫氏が言う、人命の損傷は金に換えがたいと言うが、自然再生エネルギーで生ずる人命の損耗、化石燃料によってすでに失われた人命は、原発の比ではない。何を損害に含めるかも、政府が引きおこした風評被害、政府が無策によって引きおこした強制退避によるものが大半だ。その全てを事故の損失に算入するべきではない。
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また孫氏は 世界で原発は30年減っている と発言している。
しかし、自然再生エネルギーが不可能であることが分かったから原発の新設は急激に増えている。現在、世界でも脱原発を明確にしたのはドイツ、イタリア、スイスのみだが、他の国では急速に原発の新設を進めている。世界は、今は原発推進が趨勢であり優秀な技術を持つ日本は世界の原発の安全性に責任を持たなければならないと堀氏は言う。
孫氏は、自国の事故の始末さえ出来ないのに原発輸出はモラル的に許されないと反論するが、実際女川、福島第二、東海原発は地震と津波の被害を受けながら事故にいたっておらず、福島第一を含めて全て停止している。つま� ��、原発は地震や津波で事故に至らないのは女川、東海、福島第二の例で示されているが、福島第一が事故を起こしたのは、本来見直さなければならない安全基準の見直しや改善を怠った人災である。
つまり、現在の日本の原発技術は極めて高く、だからこそ世界の原発メーカー3グループが全て日本企業と外国企業の合体企業なのだ。
孫氏はまたサハラ砂漠の3%を使えば、今の技術で世界全体のエネルギーをまかなえると言う説もある、という。説ならいくらでもあるが、実際に30年間それが実現しなかったのは、技術的に不可能だからだ。
孫氏は、日本には太陽光発電のすばらしい技術があり世界中で商売をしているのに、日本では事業化できず、世界でも後進国になっている。それは海外では大� �な補助金があり、また自然エネルギーで発電した電力を最大、一般価格の6倍で電力会社が買うシステムが出来ているからだ。日本でも同じ精度が出きれば事業化できる、とメーカーは言っているとのこと。確かにメーカーとしての商売はそれで成り立つだろう。だが、其の負担を押しつけられた国民はどうなるのか。またそれにより上昇した電力料金では操業できない製造業はどうなるのか。
外国では其の負担に耐えきれないから、今原発ルネサンスなのだ。
企業の論理で、補助金があれば、あるいは電力の買い取り制度が必要だというのであれば、やはり孫氏は政商だろう。
下記のやりとりも極めてご都合主義だ。
堀 太陽光発電だとなぜ電気代が200円ですむのか。
孫 10%節電すれば良いだろう。今でさえ22%節電できている。計算上3500万キロワットの太陽光発電で200円しか上がらない。
堀 その計算根拠は?
孫 産経省が計算した。
堀 その計算が正しい根拠がない。
キロワット当たり40円で買い上げてそんな数字にはならない。
肝心なところになると、根拠は政府が出した。俺に訊くなという。これだけの大事業を繰り広げようとする孫氏が、根拠は政府任せとはあまりに安易ではないのか。自分で出来なければ専門家に計算をしてもらい本当に政府の計算が正しいかどうか(ばらまき財源さえ計算できなか った政府の計算だが)検証もしないのか。
孫氏は、今すぐ原発を停めろとはいわない。最小限の原発はいるだろう。自分は原発ミニマム論者だと言い、そして次のように続ける。
現在の火力発電所をLNGコンバインでやれば、発電能力は1.6倍になり、増えた分だけで原発20基分になる。
現在でさえ、各電力会社は燃料代で大赤字になっている。今後の化石燃料価格値上がりをどうするのか。国家の安全保障はどうするのかを孫氏は無視している。堀氏も同様のことを言い、安全保障の面では今後安定してLNGが買えるなどあり得ないと指摘している。
また現状の石炭火力よりもCO2は減るが、CO2が排出されること自体に変わりはない。
孫氏は、自然再生エネルギーは化石燃料 が尽きる前に実用化できるはずだ、というが、出来ると思うだけでは何の保証にもならない。出来てから広範囲の事業化をすべきであり、最初から補助金頼みでは成り立たない。むろん、自然再生エネルギーの実用化に向けての研究は進めるべきであり、そのための補助金は必要だろう。だが、それが目処の立たない内に事業化されるようなことがあってはならない。
結局、孫氏が自然再生エネルギーを事業化するのは自由だが、それを国家事業にして、一般国民に負担を回すのが間違っている。電気代に転化するのが事業家の前提だというのであれば、当然政商だろう。
最後に、孫氏は、40年間利益は一銭も要らない。政商という言葉を取り消せ、と堀氏に迫り、堀氏は取り消した。しかし、後出しで利益は要� �ないと言ってもフェアではない。最初から利益は要らない、全て私財を投げ出すと言っていれば済むこと。そして、利益は要らないと言っても彼はこれにより政府とのつながりを持ち、エネルギー産業で大きな力を持つ。そのための事業で政府の補助を引き出そうとしている。政商以外の何者でもない。
メモを取りながら観たが、結果として堀氏は迫力負けであり、堀氏の理論が間違っているわけではない。損社長のご都合主義、政商振りが明らかになったと言うのが私の印象だ。なにより、孫氏の論法は特亜の声闘そのものであり、相手を遮り相手に発言させず、一方的にまくし立てて勝ったと称するものに見えた。
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