レミニールは、脳内の神経伝達物質(アセチルコリン)を分解するアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害する作用に加え、ニコチン受容体に対する増強作用(APL作用)により、アセチルコリンの放出する作用を持つのが特徴です。
それらによりアセチルコリンの濃度を高め、予定効能は「軽度から中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」で、症状の進行を遅らせる薬剤として期待されています。
レミニールを服用した患者さんは、認知症の程度を数値化するADAS-cogが2~3点改善したという結果で、これはアリセプトの「平均して1点よくなるかどうか」よりも有効度が高いそうです。
通常、成人は1回 ガランタミンとして4mgを1日2回服用させることから開始し、4週間後から1回8mgを1日2回に増量されます。
なお、症状に応じて1回12mgを1日2回まで増量されますが、増量される場合は変更前の用量で4週間以上服用させた後に増量されます。本剤は1錠中にガランタミンとして12mgを含有します。副作用を軽減するため、なるべく食後に服用させてください。
主な副作用として、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、食欲減退、頭痛などが報告されています。
コメント:私はレミニールを他の薬剤が副作用で飲めなかった患者さんに処方しています。この患者さんも、8mgを2回で、継続中です。12mgに増量したら、食欲がなくなると言いましたので、減量して使用していますが8mgでは特に副作用もなく、服用できています。
糖尿病前症は、境界型糖尿病とも呼ばれ、血糖値が正常値より高いが、糖尿病と診断されるほど高くない状態を指す。
この知見は、過去20年間の医学研究報告と相反する結果である。研究を主導した米メイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)のPeter Dyck博士は「約550人を対象とした5年間の研究による今回の研究結果は、小径線維多発ニューロパシー患者では、糖尿病前症以外の原因を探す必要性を示唆すものである。
空腹時血糖異常(IFG)、耐糖能異常(IGT)などの血糖異常(IG)やそれに伴う代謝系の混乱が多発ニューロパシーの原因とは考えにくく、少なくとも過去に報告されていたような高頻度のものではない」と述べている。研究は、医学誌「Diabetes Care(糖尿病ケア)」3月号に掲載された。
糖尿病多発ニューロパシーは、全身の神経線維を損傷するが、通常は足や脚など下肢に影響を与える。この疼痛性で、生命を脅かす神経損傷は、感覚機能や動作、身体機能に問題を生じさせる。
Dyck氏は「過剰治療による合併症リスクがあることから、医師は糖尿病前症において多発ニューロパシーの発症予防目的で治療を行うべきではない」と述べている。
[2012年02月24日/HealthDayNews
コメント:四肢のしびれを訴えて受診する患者さんは、当院でも多いです。
糖尿病の合併は常に考えますが、罹患歴や、重症度によって関連性は異なるのは事実でしょう。
境界領域の糖尿病や、罹患歴が長くない人はニューロパチーは来たしにくいのは当然です。ストレスなどで自律神経障害を起こし、しびれ感が起こる患者さんは多いですね。
〔独デュッセルドルフ〕デュッセルドルフの内分泌科プライマリケア医Beate Quadbeck博士は「高齢者の甲状腺機能障害は,若年患者とは異なる経過をたどり,症状やそれに伴うリスクも異なる」と国際医療技術専門見本市(MEDICA)で指摘。
高齢者の甲状腺機能亢進症では,潜在性であっても若年患者より早期に治療を開始すべきとする一方,潜在性の甲状腺機能低下症であれば,治療を急ぐ必要はないとしている。
うつや食欲不振でも甲状腺機能障害を疑う
高齢者では,加齢とともに視床下部と下垂体の機能が衰え,甲状腺ホルモンの分泌が減少するため,甲状腺刺激ホルモン(TSH)とトリヨードチロニン(T3)の血中濃度が低下する。一方,チロチシン(T4)の分泌量も加齢により低下するが,代謝も遅延するため,血中濃度自体は変わらない。
また加齢に伴い,抗甲状腺自己抗体陽性率も上昇することが分かっている。さらに,甲状腺組織が硬化してくるため,甲状腺結節が生じやすくなったり,硬化した組織が自律性に甲状腺ホルモンを分泌することもある。しかし,こうした甲状腺における変化は「加齢」だけでなく,時に疾患のサインでもある。
イタリアの先行研究から,ヨード摂取がやや不足している地域では,潜在性の甲状腺機能障害罹患率の方が顕性の甲状腺機能障害よりも高いことが報告されている。実際,高齢者の0.2%が顕性甲状腺機能低下症,2.9%が顕性甲状腺機能亢進症であったのに対し,3.8%が潜在性甲状腺機能低下症,4.7%が潜在性甲状腺機能亢進症であった。
アメリカの耳鳴り
また,高齢者の甲状腺機能障害では,典型的な臨床症候が認められないことが多く,場合によっては1つの器官系に限局した症状しか現れないこともあるため,見過ごされやすい。
例えば,甲状腺機能亢進症であっても発汗や振戦がほとんど見られず,その代わりに患者の5~20%で心房細動が現れる。甲状腺機能低下症では主に悪寒,睡眠障害,抑うつ状態,食欲不振が現れるという。そのため,Quadbeck博士は「高齢者でこのような症状が認められたら,甲状腺機能障害についても考慮すべきである」と強調した。
潜在性の亢進症でも心房細動リスク3倍
Quadbeck博士によると,高齢者で特に危険なのは甲状腺機能亢進症で,潜在性でも心房細動の発症リスクが3倍上昇し,65歳以上の女性では,脊椎や大腿骨近位部の骨折リスクが3~4倍上昇する。甲状腺機能亢進症によって心筋梗塞リスクが上昇することはないが,冠動脈疾患を有する60歳以上の患者の場合,TSHレベルが0.1μIU/mLより低下したら甲状腺治療を開始すべきで,それにより患者の60%で心房細動が消失する。
中期的には放射性ヨード療法や手術といった根治的治療を目指さなければならない。ただし,その前に,レボチロキシンの長期投与によって甲状腺機能亢進症が引き起こされていないかどうか確認すべきで,その場合は投与量を減らしたり,投与を中止することにより改善するとしている。
一方,高齢者の潜在性甲状腺機能低下症は,若年患者と比べて治療を急ぐ必要はない。一般に,TSHレベルが10μIU/mLを超えると冠動脈疾患と心筋梗塞のリスクが上昇することが示されているが,70歳以上になると,治療を行わないことによるリスクはそれほど問題とならない。
そのため,同博士は潜在性甲状腺機能低下症の高齢患者では,TSHレベルが10μIU/mLを超えてからホルモン補充療法(目標域は4~6μIU/mL)を行い,TSHが4.5~10μIU/mLの場合は,患者の臨床症状と「生物学的年齢」を考慮して,個別に治療方針を決定するとよいとした。
コメント:高齢者の甲状腺機能亢進症は、実際あまり見かけませんが、心房細動は多いので、甲状腺機能は検査しておく必要があります。また、中高年の特に女性では甲状腺機能低下症が� �潜在性ではなくても多いように思われます。上記のことを再確認して、診療していこうと思っています。
霊長類では世界初で、臨床応用に向けて大きな一歩となる成果。米科学誌ステムセルズ(電子版)に発表した。
パーキンソン病は、脳の神経伝達物質ドーパミンが不足して、手足の震えや歩行困難などの症状を起こす神経難病。
ES細胞は、受精後約1週間たった受精卵から内側の細胞の一部を取り出して培養してつくる。研究グループは、ES細胞を42日間かけて神経の元になる細胞に変化させ、ドーパミンを分泌する細胞が35%含まれる細胞の塊をつくった。これらをパーキンソン病のカニクイザル4匹の脳に移植し、1年間かけて観察した。
その結果、6か月後には手足の震えがなくなり、おりにしがみついて一日中動けなかった状態から、時々おりの中を歩き回るまで症状が改善した。脳内を調べたところ、正常な神経細胞ができていた。
(2012年2月22日 読売新聞)
コメント:iPS細胞の臨床応用から始まって、ES細胞(胎生幹細胞)から神経細胞をつくり、パーキンソン病のサルで、脳に移植して行った実験です。
ラットの実験は、かなり行われていましたが、霊長類では世界で、初めての成果だそうです。
問題は、移植した細胞が悪性の細胞に変化しないかが、一番の課題でした。
これが克服できれば、ヒトでの臨床応用も可能になるので、現在はDBS(脳深部刺激療法)の手術がパーキンソン病で行われていますが、もっとよい治療法になる可能性があります。
神経難病の患者さんにとっても、期待して待ちたいものです。
高齢者の歩行速度や握力の測定により将来的な認知症や脳卒中リスクが予測できるかもしれない。そのようなニュースが昨日(2月15日),米国神経学会の公式サイトに掲載された。
ボストン医療センターのEric C. Camargo氏らが2,400人超の健康人を対象に行った研究により,歩行速度が遅い人や握力の弱い人は将来的な認知症や脳卒中リスクが高まる傾向があるとして,第64回米国神経学会(4月21~28日,ニューオーリンズ)で詳細を発表するという。
握力強い人は脳卒中リスク42%低下,65歳未満では関連認めず
Camargo氏らが対象としたのは,2,400人超の男女(平均年齢は62歳)。歩行速度および握力を測定し,認知機能や脳スキャン検査も実施した。最長11年にわたり追跡したところ,認知症発症者は34人,脳卒中発症者は70人であった。
慢性的な退屈
具体的な数値は公表されていないが,歩行速度の遅い人は,速い人に比べて認知症を発症しやすい傾向が示された。また,65歳以上で握力の強いは,弱い人と比較して脳卒中および一過性脳虚血発作(TIA)の発症率が42%低下したが,65歳未満ではこうした傾向は認められなかった。
さらに,歩行速度の遅い人は,総脳容積がより小さく,記憶,言語,決断の検査では低得点を獲得していた一方,握力の強い人は,総脳容積がより大きく,記憶,言語,決断の検査で高得点を得ていたことも確認された。
同氏は「神経科医や一般開業医が患者の認知症および脳卒中リスクを洞察する上で一助となるだろう」とコメント。ただし,こうした関連については,なんらかの疾 患が歩行速度や握力の低下を招いている可能性も考えられるため,さらなる研究の必要性を訴えている。
(MT proより引用)
コメント: 歩行速度や、握力だけでなく、運動能力は認知症、脳卒中、さらに神経疾患の発症に多いに関連するように思います。ですから、生活習慣病にならないように、平常の生活に注意して、運動も取り入れていくことが大切なことだと言えます。
抗凝固療法では、特別講演が富山大学医学部第2内科教授の井上先生が「心原性塞栓症の予知と予防UPDATE」、一般演題で「aPTT測定によるダビガトランの使用経験」が発表されました。
ワーファリンと異なり、適度な治療の指標がないことが問題でした。
aPTT測定も、内服が過剰になる指標にはある程度なるかもしれませんが、内服が過小の場合は判定不能です。これは経験するしか評価できないのかもしれません。
長谷川先生のご講演は、東京からの飛行機が雪のため着陸が無事にできるか危惧されましたが、上空旋回の上、何とか無事に会場に到着されました。
認知症のスケールでも有名な先生ですが、認知症は長谷川式スケールのみでは診断できなく生活の支障がどの程度あるかなど詳細な病歴が必要であること、そしてもの忘れテストをさせて下さいと、お願いしてする検査であること、年に1-2回の検査でよいことなど説明されました。
認知症ケアの環境は
1、ゆっくりとした時の流れ
2、小規模の環境となじみの人
3、安心できる居場所と役割
認知症ケアの技法
1、 聴くことを第1に、待つこと 一月の間にどんなことがありましたか?
2、 眼を見て話すこと
3、 明るく楽しい気分を大切に
4、 寄り添う心と絆
認知症ケアのポイント
1、 新しい絆を創ること
2、 それを知識ではなくて、行動として表現できるか?
3、 そして必要な感性をもっているか?
4、 感性(センス)を持っていること
5、 認知症ケアの心をみがくこと、
などなど認知症のかかりつけ医や、ケアにあたる看護師、介護ケアマネジャーなどにも勉強になるまさに、認知症の介護研究・研修センターの名誉センター長のお話でした。
90才以上は60%が認知症になるであろうし、その頃はほとんど独り暮らしの認知症であることが予想されます。今後は国をあげて地域のネットワーク作りなど急がないともう間に会わないでしょうというメッセージは心に残りました。
慢性心不全の患者さんの在宅医療をサーバーを射水市民病院に置いて、ネットで管理するシステムの内容でした。
普通の遠隔医療システムは、最近推進されてきているように思いますが、心不全の悪化状態を管理するため、呼吸調節状態の管理や、ベット上に寝ている時間を計測して、心電図、脈拍、血圧など総合して管理されているのは、在宅医療と病院を繋ぐ素晴らしい方法かと思いました。
慢性心不全患者における呼吸調節機構の異常
<会長講演> A 会場「1F 大ホール」 15:00~15:50
「臨床神経学の進歩-現象から実体,実体から本質へ」
座長:井形 昭弘(名古屋学芸大学)
演者:栗山 勝(脳神経センター大田記念病院,福井大学)
<シンポジウム 1> A 会場「1F 大ホール」 16:00~17:50
「新時代の認知症診療」
座長:中島 健二(鳥取大学医学部医学科 脳神経医科学講座脳神経内科学分野)
辻 省次(東京大学大学院医学系研究科 神経内科)
どのようにうつ病のイルカ介在療法を軽減することができます
(1) 認知症疾患治療ガイドラインについて
演者:玉岡 晃(筑波大学大学院人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻神経病態医学分野)
(2) 新規認知症治療薬の特性
演者:下濱 俊(札幌医科大学医学部 神経内科学講座)
(3) 認知症患者の治療・介護について地域との関わり
演者:遠藤英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
(4) 治療戦略:最近の知見からみた治療開発の展望
演者:柳澤 勝彦(独立行政法人国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター)
11/17の午後は上記を聴講しましたが、特に会長講演が素晴らしく、感激しました。物理学者で哲学者の武谷三男(1911-2000)の言う三段階論法をご自分の研究法に照らし合わせてこれまでの臨床および基礎研究を進めてこられた経験をお話されました。ミトコンドリア病のMELASより早く同疾患を報告されていたのに、語呂がよくなかったので、疾患として認められなかった無念さなど研究者には共感できる内容だったかと思います。
イブニングセミナーでは「女性片頭痛特有の病態と治療戦略」も片頭痛の勉強になりました。
18日(金)は教育治療手技で「めまい治療のマニュピュレーション」、シンポジウム「神経疾患治療ガイドライン:国際比較からみた本邦の特徴」、ランチョンセミナーでは「ゾニサミドの神経保護作用と� �床効果について」、午後からは、教育講演で、テレビで話題の生坂正臣先生の「神経内科診療と総合診療」、新潟大学の西澤正豊教授の「脊髄小脳変性症の臨床と治療への期待」を聴講しました。
昔の話ですが、大学に在籍していた頃は、神経治療学会には毎年のように演題発表をしていたものです。
11月13日にはパシフィコ横浜で通常3日間の日本内科学会総会と、内科学展望の同日開催がありました。
内科学全般を幅広く勉強するのにはよい機会なので、私は予定が取れれば出席するようにしています。
今回も心臓病ではBurugada症候群(
来年は春に東京国際フォーラムで開催予定で、週末だけでも出席したいと思っています。
多くが誤診される恐れ
〔米ミネソタ州セントポール〕バルセロナ大学アルツハイマー病・認知障害科とAugust Pi i Sunyer生物医学研究所(IDIBAPS,ともにスペイン・バルセロナ)のAlbert Lladó博士らは,60歳までにアルツハイマー病(AD)を発症した早発性AD患者の3分の1は,典型的な記憶障害がないために当初は他の脳障害と誤診されやすいとNeurology(2011; 76: 1720-1725)に発表した。
早期診断のためのバイオマーカー必要
Lladó博士らは今回,バルセロナ大学-IDIBAPS神経組織バンクから,脳の剖検でADが認められた40例の臨床データ(発症年齢,家族歴,臨床症状など)とAPOE遺伝子型を後ろ向きに検討した。
発症時の平均年齢は54.5歳で,平均罹病期間は11年であった。全体の37.5%には当初,記憶障害以外の症状が見られた。最も多く見られた症状は,行動,視力,言語などの障害と実行機能あるいは業務遂行能力の低下などの非定型症状であった。
非定型症状があり,記憶障害はない患者の53%は初診時に他の疾患と誤診されていた。一方,記憶障害のある患者の誤診率は4%であった。初回診断の誤りには前頭側頭葉変性症,正常圧水頭症各2例,意味性認知症,原発性進行性失語症,大脳皮質基底核変性症,うつ病を伴う仮性認知症,分類不能認知症各1例が含まれた。
同博士は「早発性ADでは,しばしば記憶障害よりもこのような非定型症状が多く見られるため,診断が難しくなる。早発性ADを発見,診断,治療し,このような患者のQOLをできるだけ早く改善するためには,ADと他の疾患を鑑別するためのバイオマーカーが必要である」と述べている。
若年性アルツハイマー型認知症
うつ病と誤診されることが多い
高齢でなくても詳細な検査を
〔独ミュンヘン〕うつ病と診断されていた49歳の女性患者が,実はうつ病ではなく若年性アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病;AD)であった。この症例について,ミュンヘン工科大学精神科・心理療法科のBianca Natale氏らがFortschritte der Neurologie und Psychiatrie(2011; 79: 144-151)に報告。こうしたケースが多いため,持続的な認知障害が認められたら,高齢でなくてもADを疑い,詳細な検査を行うよう勧めている。また早期に診断できれば,薬物療法に対する忍容性と非薬物療法の有用性も高まるとしている。
46歳で既に発症
同患者は「3年ほど前から物の置き忘れや日付を間違えることが多くなり,10歳の娘の宿題を手伝うこともできなくなってきた」と訴えて物忘れ外来を受診。患者の夫によると,以前から精神的に不安定だったが,最近はさらに神経質になり,物忘れを恥ずかしがって人との付き合いを避けるようになったという。1年ほど前に心療内科で,こうした認知障害はうつ病によるものと診断されていた。
広範な神経心理学的検査,臨床検査,画像検査を実施したところ,血管障害を合併した若年性ADであることが判明した。コリンエステラーゼ阻害薬の投与が開始されたが,その後,間もなくうつ状態が悪化したため,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)も併用した。
進行が早いが妄想の発現はまれ
老年性ADと比べ,65歳未満に発症する若年性ADは,突然変異による常染色体優性遺伝が原因である場合が多く,進行が速い。記憶障害だけでなく,注意力の低下,言語障害,計画的に目的を実行することができなくなるといった症状が認められることが多い。一方,老年性と比べて妄想が発現することはまれである。
米国の調査によると,老年性ADの罹患率は66~75歳で1.5%,76~85歳で3%であるのに対し,若年性ADの罹患率は45~64歳で約0.1%とかなり低い。しかし,Natale氏は「若年性ADは,燃え尽き症候群,うつ病,適応障害,気分変調症などと誤診され,長期にわたって正確な診断が下されないままであることも多い。また,複数の障害を合併していることもあり,例えば,うつ病の診断に隠れてADが見過ごされることも少なくない」と指摘している。そのため,持続的な認知障害が認められる患者では,高齢でなくてもADの可能性を考慮することが重要で,たとえ認知症スクリーニングの結果が悪くなかったとしても,より詳細な検査を行うべきとしている。
若年性ADでは特に迅速な診断が求められる。というのも,認知障害により,患者は従来の作業ができなくなるだけでなく,仕事や経済的な決断で重大な過ちを犯す可能性もあるからだ。ただし,ADの検査はコストがかかるため,同氏は「そのような患者には,早期に物忘れ外来など認知症専門の医療機関を紹介する方がよいだろう」と述べている。
初期段階では神経心理学的リハビリが有効
若年性ADでも抗認知症薬を服用すべきである。軽度のAD患者には,コリンエステラーゼ阻害薬の投与が推奨されているが,同薬に対する忍容性は高齢者よりも中年者の方が高い。また,うつ病性障害や異常行動に対する薬剤も同様に,忍容性は中年者の方が高い。
一方,非薬物療法が果たす役割も大きい。若年性ADの初期段階では,神経心理学的あるいは心身医学的なリハビリテーション(以下リハビリ)が有効である。これらのリハビリを通じて,低下した記憶能を補う訓練を行い,疾患であることへの不安を和らげることも可能だとしている。
さらに,心理療法,運動療法,また言語障害がある場合には言語療法も役立つという。これらの療法では,患者ができそうな活動や趣味を見つけることを手助けして実際に行う。Natale氏は「患者の大多数は,遅くとも診断が確定した時点で仕事を辞めている。そのため,これらの療法を通じて,患者は日常生活を取り戻し,社会的なつながりを持つことができる」としている。
また,「患者の家族は,どのような支援が受けられるのか,病院のソーシャルワーカーやAD協会で,また子供のためには児童相談所などで,詳しい情報を収集する必要があるだろう」と述べている。
(MT proより引用)
コメント;アルツハイマー病に関して、いろんな情報が飛び交っているのが現状です。
若年性アルツハイマー病を早期に、診断しても、積極的治療がないのが現状ですが、それでも、上記にも記載されているように早期に診断して、薬物療法や神経心理学的リハビリを勧めることは決して無駄なことではないと思います。
最近、60歳台の患者さんの治療をしてきたのですが、突然、MRをしている息子から、治療すると却って、認知障害が悪化するから中止してもらうようにと患者さんの夫から言われて困惑しました。
結局、どうしてその息子さんが、内服継続を拒否されたのか理解できませんでした。
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